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石井一郎さん
一般社団法人地球人の学校 Social Designer 
 fukuoka

【地球人として】

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共感と信頼でつながる社会

 

人や社会を変えようとするのではなく、人格を使い分けることなく、自分自身が成長することで社会にしあわせの循環をつくる。

小学校5年生の時に、親の仕事の関係でパリに引越をしたんです。

 

日本人学校に入ったのですが、長い休みになると地元のフランス人の小学生たちと一緒に、ひと月くらい山の中をリュックを背負って施設を転々とするコロニーと呼ばれる林間学校に参加するんです。

 

他に日本人の生徒はいなくて、同じクラスになったイギリス人の男の子が、私と同じようにフランス語ができなくて、自分の枕じゃないと眠れないって、ベッドで泣いていたんです。それをみて私は日本人のプライドとして、そんなことでは泣かないぞなんて思ったりしてました。

 

それまで横浜で楽しく友達と遊んでいたところから、突然の海外暮らしになって、自分がわからなくなってしまったり、逆に自分のことがちょっとわかったり。人との違いの中で、だんだんと自分を知っていったように思います。

 

 

 

ー 違いを知るから、自分をわかって行くことってありますよね。

 

パリでの転校初日、親がしてくれたのは「私は道に迷いました」と紙に書いたものに、なぜか1万円を入れてお守りみたいに首からさげてくれたんです。

 

 

 

ー 日本円で?(笑)

 

紙には、「I am Lost(私は道に迷いました)」って書かれていて、これフランス語じゃないですけど?って、そんな感じで(笑)

 

そうやって初日から、一人地下鉄に乗って行ったんです。

 

海外で子供を一人で通学させると虐待になるらしいのですが、当時は罷り通ったのです(笑)それで自分で学校に行って、職員室を見つけて「今日かららしいです」と先生に言いました。

 

最初の授業はフランス語で、文法のテストの日でした。まずテストの答案用紙に自分の名前をアルファベットで書きますよね。でも書けなくて、「先生、自分の名前が書けません」これが初めて教室で言ったことでした。

 

先生はフランス人の方でしたから、勿論、通じませんよね。

 

当時は、生徒が少ないので高学年の子たちも同じ教室に居たんですね。それで他の子が通訳してくれてなんとか初日を終えました。そんな無我夢中な感じの生活でしたから、夏休みくらいゆっくりしたいじゃないですか?(笑)

 

夏休みは林間学校に参加です。なんでも自分でやる以外なかったですね〜。​​

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ー 5年生というと、まだ11歳くらい。それでもう一人でやってこられたのですね。言葉がわからない中で、どんな風に打ち解けていったのですか?

 

気づいたのは、周りの人と仲良くなるしかないってこと。まずは、仲良くなるために自分が出来ることを一生懸命に探しました。それでも、いろんなことがおきましたよ。

 

うちの親、1万円が好きで(笑)

 

冬の林間学校はスキーなんですね。ある時ダウンを脱いだ時に、何か入っているのに気づいて出してみたら1万円札だった。

 

誰かがそれを見ていたんですね。すぐ盗られたんです。

 

大体誰だか分かっていたので、その子に日本語で、「あなたが取ったの?」って、ニコニコしならが詰め寄った(笑)そしたら“ごめん”って言って返してくれました。

 

そういう技を身につけましたね。こういう時どうすればいいか?と考え抜く。大切なのは対立はなるべくしないこと。ニコニコして言うみたいな。



 

ー そんな風に小さい頃から一人で色々なことをしなくて、何が自分を保っていたと思いますか?

 

母の在り方には感謝しています。私にとっては最高の母です。

 

帰国後、高校生の時のことですが、母は、兄弟が多くその親類が集まると、みんなで自分の子供の自慢話しをするんですね。それが2階で遊んでいる私達(従兄弟同士)にも聞こえてくる。

 

主に学校の成績自慢ですが、母は私を褒めることが浮かばないから、幼稚園の頃までさかのぼって、障害物競走で1位になったことを語るのです。それが聞こえてきて、そこまで戻らないと自慢することがないと知り、もうちょっと頑張ろうって思いました。(笑)​
 

大学を辞める時も、「何か言うことありませんか?」って母に聞いたら、「よほど考えたことだろうから」と、それしか言わない。



 

ー 自分で考えさせるのですね。多くを語らずに相手に考えさせる。質問の極意を先にいっていますね。石井さんを信じているのでしょうね。きっとこの子はどの道を行っても、幸せになれると思っていらしたのでしょう。

 

大学を辞めて、ニュージーランドに移住した時、仕事が落ち着いてきた頃に、心配しているかと思い、母に電話したんです。

 

当時は、国際電話は郵便局からしかできなくて、長い順番待ちをして、電話が繋がったら個室のボックスに入って通話するんですが、自分の番になって、やっと繋がって、私が「もしもし」というと、「国際電話は料金が高かろう、切るよ」で終わりです。

 

でもなんだか、嬉しかったのを覚えています。

ー 早い時期から自立して、色々な経験をしていらした石井さんですが、ご自身の人生でこれから、どんな種を蒔いていきたいと考えますか?

 

「共感と信頼」の種です。

そのことにフォーカスしていたいです。損得とか権力でのつながりはすぐに限界がくる。共感と信頼でつながることを大切にしたいです。

企業向けの社会教育を企画運営していますが、私にとって、クラスの理想の雰囲気は「お茶の間」なんです。「お茶の間」ってそこにいる全員にちゃんと居場所があって、みんながその人らしくいれて、誰が何を言ってもいい安全安心な場だと思うんですね。

 

全然関係ない話をそっち側でしていて、“どんな話が出てきたのですか?”って、そこからまた話が広がって行くような。その本質はデンマークの教育にも感じました。

 

デンマークでのことは自分の中で、とても大きかったですね。

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ー 去年、デンマークに行かれてましたね?

 

デンマークとシリコンバレーに行ってきました。なぜかというと、私の中では、この2つの場所には、どこか相反するエネルギーを感じていましたので、実際に訪問してみたかったんです。

 

シリコンバレーでは、スタートアップ企業を回ったんですね。訪問する前は、スピーディーに起業して上場して、すぐに株価をあげて成功することが価値のようなイメージでした。

 

実際は、急成長をしているどの会社も同じで、「社会の課題を解決して、助け合って生きる社会をつくる」ことが価値だということでした。

 

そして業種が異なっても共通して言っていたのは、「私たちが創っているものは、社会からの信頼」だということと、自分たちが“ 誰か ”ということを明確に話してくれました。これはデンマークで感じたことと本質が同じで、だから上手くいくのだなと思いました。



 

ー 自立。そして、今度は、デンマークとシリコンバレーで「助け合うこと」を受けて、いまの石井さんの視点はどこにあると思いますか?

 

それは、違いを認め合い、違いを価値に変えると言うことです。

これまでは個人であったり、一企業だけでやってきたからこそわかるのですが、それでは限界があると言うことです。だから、お互いの違いを認め合って価値にすることが大切。

 

それぞれが自立して、別のそれぞれの場所で活躍しながらも、必要に応じて集まって、助け合って未来をつくる。

最終的には、それが社会全体になるのが理想です。



 

ー それが「一般社団法人 地球人の学校」なのですね。

 

デンマークに行った時に、お会いできた人達は「国益」ではなくて「地球益」の話しかしないんです。地球人として、自然と共生すること、違いを認め合って、助け合って生きることを、幼稚園の先生も幼稚園の子供達に教えていました。デンマークの一貫したこの教育が、生涯に渡り、しあわせな国の土台を築いていると確信を持ちました。

 

そしてこの、「地球人として自然と共生し、違いを認め合い、助け合って生きる」とういうことは、ビジネスにおいても、この循環を社会につくることなんだなと思っています。

 

昔は「そんな綺麗事」とよく言われてきましたけれど、最近は話を深めると、共感してくださる人が増えました。

 

地球人の学校では​

「自分と対話する。

 自分を楽しむ。

 自分を越える。

 未来をつくる。」

 

一人ひとりが、こういったことに意識を向けることから始めています。​

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ー 何人であるかではなくて、地球人として一人一人が自立して集まるプロジェクトチーム。助け合うという根底が、私たちは“違う”から始まるのと、“同じ”から始まるのでは、出てくるものが変わりますよね。

違いを認めないということは、対立になり、奪い合うになり、戦争にまでなることも。

 

違いを認め合えると共感や信頼になり、助け合うから応援し合うになる。すると、ひとりの夢が、みんなの夢になる。だから、夢が叶う。

 

違いを認め合い助け合って生きることは、人や社会を変えようとするのではなく、人格を使いわけることなく、自分自身が成長することで、社会にしあわせの循環をつくること。

 

例えば、「夢はなんですか?」と聞いて、「息子が結婚すること」という答えが返ってきたとします。大切なのは、意識を自分ができることに向けること。息子さんを変えようとせず、自分ができることをする。例えば、自分達の夫婦仲をもっとよくすることかも。それを息子さんが見るから結婚したくなる。

 

そのように相手への期待(息子の結婚)ではなく、自分自身の成長に意識を向けることで、しあわせの循環をつくる。

 

地球人の学校の「地球」って大きな視点ですが、実はこんな風に日々のささやかなことの積み重ねにこそ意識を向けたい。その一つひとつが循環して、大きな循環をつくるから。

ー 確かに、これまでは小さなことだけを言われてきた。例えば“部屋は綺麗にしなさい”とかね。でも、結局それはなぜするか、大きなものが見えないと出来ないもの。とはいえ、大きなことだけ言われていては、想像する力がないとこれまた出来ない。お話を聞いていてなるほどなって、腑に落ちました。

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ー 最後に、これから未来を作るリーダーシップで、一番大切にしたいことは、どんなことだと感じていますか?

人と自分を比べることよりも、過去の自分と今の自分を比べることを大切にしたいですね。

 

今日の自分が昨日の自分よりも、ほんの少し成長することに意識を向け続けたいと思います。

Mr. ichiro ishii

福岡生まれ。ニュージーランド国営ホテルのゲストコーディネーター、ホノルルの旅行会社役員、そして、外資系生活雑貨メーカーの営業部長などを経て、現在は一般社団法人 地球人の学校 代表理事として、社会教育推進事業を展開中

地球人の学校のホームページ:https://www.chikyudesign.com/

​連絡先:info@chikyudesign.com

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