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牟田彩乃さん
Primrose主宰 菓子研究家 & フォトグラファー 
LONDON

【自分を大事にすることが豊かさ】

お菓子づくりは、もう20年以上。

ここ10年は、アロマテラピー、コラージュ療法、色彩心理学、ヒーリング、コーチングを学んで来て、私の中ではどれも同じで、プロフェッショナルなもの。

全ては「豊かな人生」に必要なもの。その根底は、同じものだと思っています。

ー 彩乃さんの思う「豊かさ」とは、どんなことを指しますか?

 

豊かで幸せな人生とは、その人、その人が、自分をどれだけ大切にしているかだと思うのです。その為には、自分の軸を持っていなければと思いますし、自分を大切にして無理をしないこと、自分を知り、魂の望む事をしていくこと。

 

無理をすると、結局「私はこんなにしてあげたのに」って人を責める。それって豊かではないですよね。

 

まず、私が自由にそれを体現して、このエネルギーから何かを感じていただける、そういう存在になれたらいいなと思っています。

 

 

 

ー それを思ったのは、どんなことがきっかけだったのですか?

 

子供の頃から心理学に興味があって、本を読むのが好きでした。あと、大人の言っている言葉の矛盾さ。

 

本音は違うんじゃないかって気になったり。

 

親世代、特におばあちゃん達は、「努力、忍耐、頑張り」という考えで、何かないと努力が足りないと考える。怠けると怒られるわけですね、苦労しなさいって。

 

でも、無理して頑張った人が体を壊すのを見ていたので、やっぱり違うんじゃないと思っていたんですね。

 

当時、中東に住んでいたのですが、子供が生まれて引越しなどもあって、無理して体調を壊して。それから自分(体)に向き合うところからはじめ、イギリスにきて内面と向き合う学びを深める中で、自分の子供の頃の考えは、間違ってないなって思った。

 

そう納得したことが、大きな転機になりましたね。

 

 

 

ー そんな思いを感じながら、その後はどのように進まれたのですか?

 

短大を出て、航空会社に勤めたんです。後から考えると、職人タイプの私には、合ってなかったんですね。

 

仕事も楽しいし、世界を飛び回るのは刺激的で、素晴らしい仲間も出来ました。ただ、ハードで不規則な仕事を続けていると、飛行機に乗ると酷い頭痛がするようになってしまって、5年間で辞めてしまったのです。当時は小さなことも気にしてしまう性格で、今思うと自分の意見よりも、他人を優先、自分よりも人に軸を移す癖がついてしまって、どんどん自分の軸がなくなってしまったのですね。

 

 

 

ー 自分とかけ離れて行くような?

 

きちんとしなければ、迷惑をかけないように、と人に合わせて、自分の感覚を無視してしまって、本当に何が好きかわからなくなってしまった。そんな自分から、完全に戻りきった気がするのは、ここ数年ですね。

ー それでは、割と最近なのですね?

 

すーっと軸が戻ってからは、こんなに楽なのだと思いました。自分を大切にすると、他人の世界も大切に思うし、無理に同調する必要もない。思考のバランスが整うと体調を壊す事も全くなくなって、この経験をなんらかの形でお伝えできるといいなって思っています。

 

ロンドンは、健康志向が強く食にこだわる方が多いのですが、良い、を作ると悪が出来て、世の中悪いものだらけになって、かえって思考も身体もバランスが崩れてしまう。

 

自分に合うものを知る。多少は何を食べても、崩れないだけのエネルギーがあればいいなと思います。

 

私は、何かを食べる時に「本当に食べたいか?」って、体に聞くようにしています。これはどこかに行くときも同じです。

 

外出しなくてはならないときでも、例えば「そこに行きたいですか?」って、自分に聞いています。ここ(ロンドン)では、テロの危機もあるので、出かける前に自分に聞く様にしています。

 

自分の身をも守るのは、自分でしかないですしね。

 

実際に、気が乗らず行くのを止めて、実際の事件ではなくてテロ騒ぎでしたけど、巻き込まれずに済んだことが続いたので、自分を信じるって大事だなって思うんです。

 

ー お菓子作りとの出会いは、どんなことだったのですか?

戦後、母方の祖父がケーキ屋を始めたのですね。戦争から戻って来て、今でいうパティシエコンクールで、初代の最優秀技術賞を取って。

 

祖父は、日本の洋菓子界の先駆者のような人で、家にはいつも職人さん達や、沢山のお客様がいらっしゃる、私はそんな家で生まれ育ったんです。

 

 

 

ー 家中、お菓子の香りがするようなところで育ったのですね。

 

3歳くらいからクッキー作りで遊んでいましたし、いずれケーキ屋をするって夢を持っていました。

 

私自身は、コルドンブル―(パリの料理教育機関)で学び、その後、職業訓練校を卒業、国家資格を取得しました。航空会社を退職後は、本場で学びたいとパリの料理学校(エコールドリッツエスコフィエ)へ留学、研修をしました。

 

 

 

ー 一言では言えないと思いますか?彩乃さんにとってのお菓子とは、どのようなものですか?

 

人生に、欠かせないもの。

 

もし、世の中からケーキが消えちゃったらと思ったら、バースデーケーキの時の子ども達の笑顔も無くなるわけで、人生で大切なシーンに欠かせないものだと思っています。だからこそ良い材料で、良いエネルギーで、それらを程よく楽しむ生活は、「豊か」ではないかと思っています。

 

祖父がお店をやっていた時にこだわっていたのは、添加物を使わないは勿論、できるだけ新鮮な良い材料で作るということ。

 

それとよく言っていたのが、家の近くに大きな病院と避難所があるんですが、もし何か食べ物がないなどの事態が起きて、子供達が避難して来たとき、お店にストックしてある焼き菓子などを、食べてもらうのだって言っていました。

 

祖母もまた、人の面倒を見るのが好きで、子供の頃からいろいろな人が出入りしていました。そんな祖母によく聞かされていたのは、自分が貧乏をして居ても人にまず食べさせてあげることは、一番の徳を積むことなのだよって。

 

私が人を招くのが好きなのは、ここからきていると思います。

 

いまでも祖母は、私からお客様を家に招いたと聞くと、「それは、良いことしたのね」って、よく褒めてくれます。そんな環境の中で育ちました。

 

 

 

ー 彩乃さんの周りの方達の生き方、在り方に大きく影響されていらしたのですね。

 

タイガーバーム家に嫁いだ胡暁子さんは、祖父のはとこにあたる方で、直接に会うことはなかったのですが、よく家族から聞いていたのは、自分も実業家として成功していながら、世界中の難民のために走り回って来たのですね。

 

尊敬している方のお一人なのですが、世の中の為に何かをするというのは、心が豊かじゃないとできないことで、まずは自分が満たされ、家族が満たされて、それを社会へ還元して行く。

 

これが私の目標です。

ー 最近、彩乃さんの本を出版されたのですよね。出版の経緯はどんなことからでしたか?

 

世界中のホテルステイが好きなので、旅の専門家としても記事を書いているんです。それで私の記事やブログを見て、ある出版会社から連絡してくださったのです。

 

ブログは12年間続けているのですが、私が大事にしていることは、ネガティブな内容、言葉を使わないこと。あとで読んでも、恥ずかしくない内容であること。これはとても気をつけていました。

 

アウトプットは自分軸がないと出来ないし、続けていると世界が変わります。

 

記事の中で一番人気があるのが、「イギリスのショートブレット5選」という記事。とにかくイギリス中にあるショートブレットを食べて、友達にも評判を聞き、特に厳選したものを載せているんです。

 

ここで適当なものを書いてしまったら、プロフェッショナルな方が見たらわかると思いましたし、自分のプライドとしては、きちんととしたものを出そうと。そこを見てくださったのは、こだわって来たことは間違ってなかったなと思いますね。

 

だからこそ、ご連絡を頂いた時は、嬉しかったですね。この本を出すことで、祖父やご先祖様から受け取った魂、お菓子を通して豊かさを届けることへの思い、を繋いで行くことかなって思いました。

 

 

 

ー お菓子作りの中で、感じ取って頂きたいところはどこですか?

 

イギリス菓子の背景、その歴史を知って大好きになったんですね。

 

「いまのロンドンに住むイギリス人と伝統的な英国菓子のかかわり」をリアルに書いて欲しいと依頼され、この本の取材がきっかけで、たくさんのイギリス人にお会いして、話を聞いたのですね。

 

キャロットケーキって、あるじゃないですか?

 

第二次世界大戦中に、砂糖は高価で手に入らなくて、配給されていた甘い人参をお砂糖の代わりに作り出したのが、キャロットケーキだったんですね。

 

こんな話を聞くと、キャロットケーキってすごいなって思う(笑)

 

 

 

ー 食べたくなりますね!

 

英国のアフタヌーンティーに欠かせないキュウリのサンドイッチも、何でキュウリかというと、昔、イギリスでは高価なもので、お金持ちのお庭でしか栽培されてなかったほど、貴重なものだったんですね。それを聞くと、キュウリのサンドウイッチも愛おしい。

 

こうして一つ一つストーリーがあって、それを聞くと聴かないとでは、お菓子への思いが全然違う。

 

菓子の作り方を教えるだけじゃなくて、このような経緯があって作られて、その生き方の豊かさや、物を大事にすることも伝えたいなって思います。

ー 色々な国のお菓子にも、人にも出会ってきたと思います。昔、いま、そして未来の豊かさって変わって行くと思うのですが、彩乃さんは、これからの豊かさのために、どんなことを大事にしたら良いと思いますか?

 

失敗を恐れず、色々な経験をしたらいいなと思います。

 

ひとつ頭を殴られるような出来事があったのですが、私がアブダビに住んでいた30代前半の頃、「断捨離」ブームがあったんですね。私も断捨離しなきゃ、断捨離することが素晴らしいことだと思っていたんです。

 

断捨離したもので、再利用が可能なものは、人に譲ったりしたのですが、シミなどがついちゃって着られない服をゴミ袋に入れて、まとめて置いていたんですね。

 

アブダビなので、多くの家にお掃除の方がいたのですが、その方が「この袋に入っているのは何だ?」って聞くので、ゴミだから捨ててくださいと言ったら、「え?ゴミじゃないよね?まだ、着れるようね」と言われて、それから何も言えなくなってしまったんです。

 

そこから思ったのは、断捨離をして素晴らしいと思っていたけど、世界からそれを見ると、断捨離をできていることが、どれだけ幸せなことなんだって気づきましたね。

 

良し悪しではなくて、気づけたことは有り難いですね。

 

それから物欲もなくなって来ましたね。鞄だって数個あればそれでいい。段々と生活もシンプルになって、逆に断捨離をしなくていいようになって来ました。

 

世界を知るという事は、今の自分の恵まれた生活が当たり前ではないことを知る事、そこから感謝の気持ちが持てる。こう言ったことを、子供たちにも引き続いていけたらと思っています。

 

 

 

ー これからの彩乃さんのチャレンジは、どんなことですか?

 

実は、夏に日本に一度戻るので、海外経験を経て感じて来たことを、お菓子作り、アフタヌーンティーなどのレッスンをしながら伝えていけたらと思います。

 

健康に気をつけ過ぎて、逆に不健康になっている人も多いので、本来の目的を忘れない事、美味しいものを楽しく食べることを、バランスを大切にすること、をお伝えしたいですね。あと、新しいこともしたいですね。

 

私、壁を作って乗り越えるのが好きなんです。

ー (笑)あえて挑戦するんですね?凄いですね。

 

チャレンジする山がないなって思うと、自分で作っちゃう(笑)

 

もちろん、嫌なことはしないのですが、山を越えたその先の景色を見たい、その方が興奮するんです。

 

 

 

ー チャレンジャーなんですねー。

 

私、過去を振り返らないんです(笑)

 

コーチングでも使われる自己分析があるんですけど、私は「未来志向、最上志向」なんです。(笑)常に自分の最高の未来を考えていて、それに向かっているので、だから、よく忘れ物もします。

 

芝生にハンカチを敷いて座っていて、立った時にはハンカチは置いて行きます。(笑)

 

 

 

ー 座っていたハンカチは、もう過去なんですね(笑)

 

そう、もう過去なんです(笑)

ー とはいえ、自分の仕事にはとても拘りを持って、細部に意識して進められる彩乃さんでもある。それが素敵です。

本を作るときも半年間は、他の仕事を休んで没頭しましたね。毎日スコーンを食べ歩いたので、しばらくスコーンが食べられなくなりました。(笑)

ー 最後の質問ですが、もし、自分の人生から投げられる問いがあるとしたら、それはどんな質問だと思いますか?

「今回は、幸せに生きていますか?」ですね。

 

多分、これまでの人生色々なことがあって、その延長での今だと思うのですが、これからもハッピーで自由に。

 

この頃は、子供に戻った様に自由で、自然体でいられて楽しいと思っています。それにつれ、ハートで繋がる、愛溢れる仲間たちに囲まれてきて、なんて幸せなのかな!って思えています。

Ms. Ayano Muta

ロンドン在住 菓子研究家&フォトグラファー PRIMROSE主宰

 

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